総領事のシアトル見聞録 第2回

国際ロータリークラブのアトランタ世界大会

6月10日から12日まで、アトランタで開催された国際ロータリークラブの世界大会に出席しました。日本を含む世界200か国・地域のロータリークラブの代表が一堂に集まり、その数は何と約4万人。開会式や全体セッションのほか、様々なテーマに分かれての会合が沢山開かれ、また各国のロータリー活動を紹介する数百のブースが巨大なホールに設置されている様子は圧巻でした。私は、キャシー・ギブソン会長のおかげで、シアトルから参加している大勢のロータリアンの会合に加えて頂き、楽しい時間を過ごすことができました。シアトルのロータリークラブは1909年に設立され、全米、つまり全世界で4番目に古い歴史を持ち、会員数としては世界最大と言われ,最も活発に活動しているロータリークラブの一つです。彼女のイニシアチブで、この一年、トランスジェンダーの人を招待して社会的差別を議論するなど、このロータリークラブでは社会の様々な問題を取り上げています。

ロータリークラブ・インターナショナルは1979年から、世界のポリオ撲滅運動のイニシアチブをとっており、既に世界122か国で25億人の子供にワクチン接種を行ってきました。アトランタ世界大会には、ポリオ撲滅運動の最大の資金貢献者であり、ロータリーの活動と協力してきたビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ共同議長が出席して、世界のポリオ撲滅運動の現状や課題について熱弁をふるいました。ポリオといえば、フランクリン・ルーズヴェルト大統領も大人になってから感染して、身体がマヒしてしまったことが知られています。日本政府もポリオ撲滅を重要課題と考え、今までに5億ドル以上の資金を国際協力のために支出しています。今回、アトランタでは、ポリオ撲滅運動のドナーのセッションにおいて、安倍晋三総理大臣からのビデオ・メッセージが流れました。世界でポリオがまだ残っている国は、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンの3か国で、目標達成まであと一歩の状況です。しかし、10年前もこの3か国だけが残る状況は同じでした。日本では「百里の道は九十九里をもって半ばとせよ。」という諺があります。国際協力で残りの坂道もどうにか登り切って、ポリオが天然痘に次いで人類が撲滅に成功した2番目の感染症となり,ポリオの被害を過去の話にしたいですね。
 

タチ・ヤマダさんを訪問~野口英世アフリカ賞の恩人

ビル・ゲイツさんの関連で、もう一つの出会いがありました。6月23日に山田忠孝さん(Tachi Yamada)を訪問しました。彼はもと内科医で、2006年から2011年まで世界最大の慈善財団、ビル・アンド・メリンダ財団で国際保健プログラム総裁を務め、途上国の保健衛生の向上の為に様々なアイデアを出して国際保健に携わる人々にインスピレーションを与えた人です。私はかつて外務省で世界エイズ結核マラリア基金やWHOの仕事をしたことがあり、またケニアで働いていた時にはゲイツ財団の存在感の大きさを感じていていました。タチ・ヤマダさんのお名前は折に触れて聞いていたので、シアトルに来て是非お会いしたかった日本人の一人でした。ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を2011年に退いた後も、彼の活動は衰えを見せず、武田製薬に籍を置いて新薬開発に取り組みつつ、今日でも米国の国際保健の取り組みをリードする中心人物の一人であり続けています。米国を拠点としてキャリアを積み重ねつつ、日本との関りも深いものがあります。2008年の東京国際アフリカ支援会合(TICAD4)の際には、アフリカの保健衛生の改善に顕著な貢献した人を称える「野口英世アフリカ賞」が設立されて第一回の授賞式が行われました。その際の制度づくりと受賞者の選定に、多大な貢献をされたのがタチ・ヤマダさんです。また彼は、日本政府が2013年に設立した枠組みであり、官民協力で製薬会社を巻き込んで、顧みられない熱帯病等の新薬開発を資金的に支援する仕組みであるGHIT基金(Global Health Innovative Technology Fund)の立ち上げにおいて中心的な役割を果たしています。タチ・山田さんはこれらのイニシアチブの背後にある考えを説明してくれて、現在のゲイツ財団の国際保健プログラム総裁であるChris Eliasさんにもご紹介下さいました。国際保健分野での日本とワシントン州在住の関係者との協力は、私がシアトルで推進したいと考える重点項目の一つです。