総領事の見聞録 第10回

熊本県知事,モンタナへ!

熊本県の蒲島郁夫知事一行が11月12日から16日まで、モンタナ州を訪問しました。熊本県とモンタナ州は1982年に姉妹県/州関係を締結し、今年が35周年となります。

モンタナ州というところは、全米50州のうちで4番目に大きな面積を持つ一方、全米で7番目に人口の少ない州(人口100万人)です。別名をBig Sky Countryというように、自然のスケールの大きさで有名で、観光と農業が主要な産業。日本製粉社を始めとして日本との取引関係が強く、モンタナ州から輸出される小麦のなんと約3割が日本向けです。

蒲島知事は農業と深い関わりのある方です。9人の兄弟姉妹の7男として生まれた彼は、家がとても貧しかったので、兄弟皆が朝晩の新聞配達で一家の生活を助けていたということです。高校を出た彼は,学問をする機会を求めて、現在も続いている青年農業者研修プログラムに応募して米国に来ます。研修先の農家で労働の毎日を送ったあと、ネブラスカ大学で農業を学んでいる間に、教授から学業を続けるよう励まされ、猛勉強して奨学金を獲得し農学修士を取得。政治学に転じてハーバード大学で博士号を取得しました。そのあと筑波大学、東京大学で政治学を教え、9年前に故郷の熊本県知事に立候補して当選、現在3期目を務めておられます。まさに,「アメリカン・ドリーム」を体現された方です。

このような経歴を積まれているので、英語は非常に堪能で、モンタナ州の訪問中は、原稿なしに自分の言葉で、ご自身のこと、県政の方針,2016年4月の熊本震災への取り組みなどについて語られました。知事の給与を大幅にカットすることを提案し,多くの県民にも歳出カットへの協力をしてもらったエピソードを聞いて,私の隣に座っていた米国人は,「これこそ政治家の示すべきリーダーシップだ」と感嘆の声を挙げていました。また、多くのモンタナ州関係者は、くまモンが「誕生」以来の7年間で37億ドルのビジネスを生みだしたという話にも感心して,熱心にメモを取っていました。

州都のヘレナでの歓迎式典では、ブロック州知事が、両州・県間の日ごろの活発な人的交流に加え,熊本の地震やモンタナの山火事の時に市民が義援金(義捐金)を送りあう熊本・モンタナの関係を「真の友人である」と述べました。

知事一行の訪問中、熊本県を訪問したことのあるモンタナ州の人たちが、熊本県への熱い思いを口々に語っていたのが印象的でした。酪農や観光が盛んであること、自然の大きさ、人のおおらかさなど、共通点が多いのでしょう。一方で、日本では決して見られない光景もありました。バスで移動中に休憩で立ち寄ったアウトドア活動用品店では、カウンターの後ろに様々な銃が並べてあり、誰でも簡単に購入できるのです。私も、「変わった形の電池だな」と思って手に取ったものが、実は銃弾がたくさん入ったプラスチックのケースだったので驚きました。計算したら、実弾一つが1ドルを少し上回る値段でした。

私が外務省に入って外国に初めて関わったのは、モンタナ州でした。1984年に入省して最初の配属先が国際報道課でした。2年前に熊本県と姉妹関係を結んだモンタナ州から新聞記者を招聘することになり,私が長崎、熊本に同行しました。そのジャーナリストは熊本県での歓迎夕食会で、「有名な郷土料理は馬刺しとフグ。どちらを食べますか」と訊かれ、「モンタナ州では馬は人間の最良の友人。自分は毒の魚を食べます」と言って、決死の覚悟でフグを食べました。ところが、意外なことに「これは美味い」、「これなら死んでも納得できる」などと述べて、フグに大満足。このエピソードをブロック知事に話したところ、笑いながら,「自分の知っている人物だという気がするので,探してみる。」と言ってくれました。再会に期待したいと思います。