総領事のシアトル見聞録 第5回



シアトル市長とワシントン州知事: 皆さん日本と繋がっています

前回はお祭りの話題だったので、今回はもう少しフォーマルな仕事の話題です。総領事の仕事の中で大切なものの一つに、地元の行政府や立法府の方々と知り合いになることがあります。日本の関心事項を伝えて日頃から考慮してもらい、そしていざ何か問題が発生したら連絡を取って話し合い、一緒に解決の糸口を探るのです。
 
ですから、着任後すぐに行政府や立法府のリーダーの皆さん方に挨拶に行きました。日本と姉妹都市関係にある市はワシントン州内に36もあります。これらの市が重要であることはもちろんですが、それ以外にも日本にとって大切な市や郡などの行政単位があります。そのほかにも、州の各行政部門や地域の経済発展委員会のトップの方々なども欠かせず,沢山の人にお会いしています。実際にお会いして話してみると、皆さん日本といろいろな形で繋がっていて、日本に対する関心とシンパシーを持っていることに驚かされます。
 
ワシントン州のジェイ・インズリー知事は民主党員です。1993年から1994年、1999年から2012年までと2回にわたり連邦議会の下院議員を務めたあと、ワシントン州知事に当選し、現在二期目を務めています。クリーンエネルギーと環境問題に強い関心を持ち、本も著しています。また、航空機やIT、ライフサイエンスを中心に強い発展を続けるワシントン州の将来のため、教育への投資を重視しているということです。今年の12月から、民主党所属知事協会の会長に就任することが決まっています。全国的にも注目を浴びる機会が増えることから、地元の新聞は2020年の大統領選挙に出馬するのではないかという観測も報じています。
 
彼は20年程前、ワシントン州東部のヤキマ市に住んでいた時、日本の高校生をホームステイで2人受け入れたことがあると話してくれました。うち一人が、到着したその日の歓迎ホームパーティーで、バーベキューの牛肉を食べ過ぎて体調を崩し、生命に関わるのではないかと心配したことがあったそうです。高校生は英語が話せず、知事や家族も日本語が話せず、こちらの気持ちが高校生に伝わればと祈るような思いをしたと述べました。私から「知事のその後の政治生命に関わりかねない重大事件でしたね」と述べたら大笑いして、「彼は次の日には元気になって、またステーキを食べましたよ」と言っていました。
 

 
昨年6月、ジェイ・インズリー知事と佐々江賢一郎・駐米日本大使の間で、日本とワシントン州の間に協力覚書が署名されました。日本はワシントン州にとって農産物、海産物、林産物からハイテク産業に至るまで極めて重要なパートナーです。私との会談でも、日本からの留学生を多く受け入れている大学の名前を複数挙げて若者交流の重要性を挙げ、また、三菱航空機がモーゼスレイク市で飛行試験中のMRJへの期待も伺えました。インズリー知事は登山やサイクリングなどのアウトドアスポーツが好きで、「全米で一番頑健な知事」と言う人もいます。御自身が何度も登ったことがある富士山によく似たレニエ山を描いた自作の絵を背景に記念写真を撮りました。

 
 
シアトル市のエド・マレー市長は民主党員で、州の下院議員、上院議員を歴任したあと2014年にシアトル市長になりました。日本には昨年、姉妹関係にある神戸市や東京を訪問しています。マレー市長はシアトル市の地震対策を進めたことで有名です。シアトル市は断層の上に位置しており、過去には大地震が起きたことが知られています。2001年にシアトル南部の州都オリンピアに大きな被害をもたらした地震の際、シアトルの沿岸部を走る幹線道路の高架橋に被害がでました。次に大きな地震が来ればこの高架橋が崩落する可能性が指摘され、その対策として地中にトンネルを掘って道路を通し、高架橋は撤去して湾岸部を再開発するというプランを推進しました。このトンネルはすでに開通しており、掘削に用いられた大型機械は日立造船製です。
 

彼は同性愛者であることをすでに1980年に公表しており、2006年に州議会が30年近い議論の末に同性愛者に対する職業、保険、住居での差別を禁止する立法を可決するうえで大きな役割を果たしました。その後に同性婚を認める立法も彼の努力により可決しています。前回の投稿で触れたとおり、2013年に日系人のマイケル・シオサキさんと結婚しました。シアトル市は急速に発展しており,市長も交通渋滞の緩和などの成長する都市特有の問題に取り組んでいます。会談中、マレー市長は「次の週末に市内の日本の寺で盆踊りがありますが、総領事は行きますか?私は行きますよ。」と述べたり、特に初めての姉妹都市関係のパートナーである神戸市とシアトル市の伝統的な深い関係など,日本とシアトルとの関係の深さについて語りました。
 
ワシントン州の市長を選ぶ方法は市によって異なり、公選で直接有権者に選ばれるタイプと、市議会議員の互選で選ばれて務めるタイプの二種類があります。シアトルの市長は公選職です。彼の任期は今年一杯で終了します。マレー市長は再選の立候補をせず、8月1日に行われた予備選挙では21人の候補者の中から11月第1月曜日直後の火曜日(本年は11月7日)に行われる本選に残る2人の候補が選出されました。二人とも女性なので、次のシアトル市長は女性になる模様です。
 
今日はこのお二人をご紹介しましたが、他にも日本で英語を教えていたことのあるリンウッド市のニコラ・スミス市長や、ご夫人が日本に英語教師として滞在していた間に日本中をくまなく旅行して良い思い出をたくさん作ったというボブ・ファーガソン司法長官など、日本といろいろな関わりのある人がたくさんいます。皆さん気さくで温かい人たちで、ワシントン州の精神を体現しているように思いました。