総領事の見聞録 第16回

ザ・ベンチャーズのコンサート


 
若い方は,ザ・ベンチャーズをご存じでしょうか。1959年に結成され,エレキギターとドラムでいくつもの大ヒットを飛ばしたグループです。今まで全世界のアルバムの売り上げが9千万枚以上で,4千万枚以上が日本で売られました。「急がば回れ」,「ダイヤモンド・ヘッド」,「ワイプ・アウト」など,聞いた記憶のある方が多いのではないでしょうか。それよりも,「テケテケテケテケ」のグループだと言った方がピンとくるかもしれません。

全盛期の60年代に,日本では何度も公演して大人気を博しました。私は1961年生まれですので,よく覚えています。当時の日本のプロモーターにお金がなくて,ドン・ウィルソンさんとボブ・ボーグルさんだけが呼ばれての初来日は1962年。バンド全体で1965年に日本に戻ってきたときには,羽田空港に5000人の熱狂的なファンが詰めかけたそうです。それを見たボーグルさんは,「いったいこの飛行機には誰が乗っているんだろう」と言ったとか。

日本には50回以上も公演で来ています。それだけでなく,1970年前後を中心に日本向けの曲を沢山作り,その数は30曲にもなるとか。中には,大ヒットした「日本の歌」もあります。「二人の銀座」や「雨の御堂筋」,「京都の恋」,「京都慕情」などは,カラオケの定番です。実は,このブログを書くために調べるまで,これらがベンチャーズの曲だとは知りませんでした。これらのどれも,「日本的」にしか聞こえないと思いませんか。

日本にエレキギターを本格的に持ち込んで,戦後日本の音楽界の一大革新をもたらしたベンチャーズ。彼らは長年にわたり,日本と米国の音楽の真の架け橋となりました。この功績に対して2010年7月にはメンバー全員に日本の勲章が授与されました。これは,日本人以外のポップミュージック・グループとしては初めてのことでした。ベンチャーズは,2008年には米国のロックンロール殿堂入りも果たしています。

このベンチャーズのメンバー,ノーキー・エドワーズさんが今年3月12日に他界され、6月3日にタコマのテンプル劇場で,ノーキーさんを偲んでコンサートが行われました。ベンチャーズのリーダー,ドン・ウィルソンさんはタコマの出身です。オリジナルメンバーの中でご存命なのはドン・ウィルソンさんだけで,彼も2015年の日本公演を最後にツアーから引退し,現在,ベンチャーズは第二世代のメンバーに引き継がれています。6月3日のコンサートにはウィルソンさんも参加して,往年のギターの腕を示しました。
 

Mr. Don Wilson with a Gold Record on June 3 in Tacoma

ウィルソンさんは今年85歳。テンプル劇場には米国内で獲得した数々の賞のほか,日本公演のポスターや日本で販売されたCDなども並べられ、ベンチャーズの功績の大きさに圧倒されました。

9歳の息子は、ウィルソンさんから頂いたギターの爪を“宝箱”の中に大切にしまっています。ベンチャーズの大ファンである祖父へのおみやげにするのだと、嬉しそうです。妻の父親は今年71歳。まさにベンチャーズとともに青春時代を過ごした世代で,今でもフェンダーのエレキギターで元気にベンチャーズを弾いています。テケテケテケテ,テーン。