総領事の見聞録第26回

平成最後の天皇誕生日レセプション

12月14日,公邸で平成最後の天皇誕生日レセプションがおこなわれました。明仁陛下は1989年1月7日に即位されて30年。来る4月30日には退位され,5月1日には徳仁皇太子殿下が新しい天皇になられます。新しい時代の到来ですね。


天皇誕生日レセプションのための天皇皇后両陛下の写真

平成という時代は,戦後,ひたすらに経済成長を続けてきた日本が大きな壁に突き当たり,それまでの政治,経済,社会のやり方を変える道を模索し続けた30年間だったと言えるでしょう。それは,日本が若々しかった社会から,高齢化社会に向けての移行期だったとも言えます。また,この30年間は,神戸をおそった大震災や東北地方の大震災を始めとして,日本が相次ぐ大規模な自然災害に苛まれた時期でもありました。

1990年に「即位の礼」の仕事をしていたとき,まだ小型のスーツケースくらいの大きさだった“携帯”電話を見て,電話線なしで通話可能であることに驚いたものでしたが,今では誰もがスマホをポケットに持ち歩いています。国際電気通信連合によれば,2019年中に,インターネットを利用する人がなんと世界の半数を超える見込みだそうです。


シャロン・トミコ・サントス州下院議員

天皇誕生日レセプションにお集まりいただいた約240名のゲストの方をお迎えして,私はそれぞれの社会や国際環境の変化にもかかわらず,日米関係が強い信頼の絆で結ばれていることを述べました。ゲスト代表として挨拶されたシャロン・トミコ・サントス州下院議員も,日米の協力が果たしている重要な役割を強調されました。

そして,3名の功労者に「総領事表彰」を行いました。3名の方々とは,ダイアン・ナラサキさん,スコット・オキさん,ミナ・ミラーさんです。
 

ダイアン・ナラサキ氏

ダイアン・ナラサキさんは,アジア相談・委託サービスという,アジア系住民の保護のための各種サービスを40近くの言語で提供する大きな組織の事務局長を23年にわたって務められた方です。アジア系住民の人権保護と社会正義のために行動するリーダーとして,大きな尊敬を集める日系米国人です。


スコット・オキ氏

スコット・オキさんはマイクロソフトの創成期に上級副社長を務められた後,各種の社会事業に尽力されています。日系米国人の経験した強制収容などの歴史をデジタル媒体で記録し,後世のために記憶することを使命とする団体「Densho」の創設者です。また,彼はアジア系住民のための幹部養成学院を創設して,多くのリーダーを育成してきました。


ミナ・ミラー氏

ミナ・ミラーさんはユダヤ人のピアニストです。20年前から,音楽によってホロコーストの記憶や犠牲者の音楽作品を現代の我々に伝えるMusic of Remembrance (「記憶の音楽」)というプロジェクトを実施してきました。最近では日系米国人の経験した強制収容や,原爆被災などをテーマとした音楽も取り入れ,人類が忘れてはならない悲惨な歴史の意味を考える場を提供しています。

従来,「総領事表彰」の際には表彰状を差し上げていましたが,今回から,記念の特製メダルを併せて授与することに決め,この3名の方が新しいメダルの初の受賞者になりました。ところが,3日前に届けられたメダルを見て,目の前が暗くなりました。裏面にある「1895年より(注:ワシントン州に領事館が開設された年です)」という数字が正しく刻字されておらず,「189年より」になっていたのです。製造者のミスだと分かりましたが,もう新しいものに取り替える時間がありません。授与式では,会場の皆さんに西暦189年に起こったことを説明し,受賞者に「これしかないんです」と言って,この欠陥メダルを差し上げたところ,皆さんは「この方が記念になる」と笑って受け取ってくださいました。会場の皆さんも温かく見守ってくださいました。


「1895年」ではなく「189年」と刻字されたメダル

アメリカに来てからいろいろな新しい経験がありますが,随所に見られるアメリカ人の大らかさとユーモアは,我々日本人にも参考になる大切な心構えであるように思います。