総領事の見聞録第31回

2つの桜祭り~その1 Sakura-Con


シアトルで春に行われる日本になじみの深い2つのお祭りについての話題です。Sakura Conと桜祭り。どちらも桜にちなんだ名前ですが、扱っている内容が少々違います。今回はSakura-Conについて、紹介したいと思います。
 

Sakura Conは、シアトルにあるワシントン州会議場(Washington State Convention Center)でイースターの週末の3日間にわたって行われる、日本のマンガとアニメを扱う祭典です。ここには一般のお客さんの他にも、コスプレを楽しむ人たちもたくさん訪れます。2000年にこの名前の行事が始まった時には800人強の参加者を集めるに過ぎなかったようですが、今では2万人以上の人が詰めかける程のイベントになりました。コスプレを楽しむ人たちは好きなキャラクターの衣装に扮してその粋を競い、鑑賞しあいます。私もご多分に漏れず、子供の頃はいろいろな漫画とアニメを見て育ちました。子どもの頃に見たキャラクターのコスプレ(例えば、「宇宙戦艦ヤマトの古代進」など)をSakuraConで目にすると、懐かしい気持ちがこみ上げてきます。日本のポップカルチャーがこれほどアメリカの人に愛されているとは、嬉しい限りです。
 

今年も例年に倣い、開会式で挨拶をしてくださいと頼まれました。実は今年は、「機動戦士ガンダム」の40周年記念の年。そこで、総領事館の同僚と一緒に、ガンダムのキャラクターに扮して寸劇をすることにしました。私がシャア・アズナブルに、ラーズ・ヘンリクセン君がアムロ・レイに、マギー・ソープさんがセイラ・マスに扮し、リン・ミヤウチさんがハロの模型を動かしました。衣装はインターネットで日本から取り寄せましたが、シャアの装備(ヘルメットとアイマスク、レーザーガン)は、工作の好きな家内が作りました。いい歳をした私が若者に交じってコスプレをするのは少し勇気がいるのですが、こういう時には覚悟を決めて実行あるのみです。動画はこちらのリンクをご笑覧ください。
 

マギーさんとリンさんの2人が書いてくれたセリフに情景の説明を加えて、ここに御紹介します。

-アムロ、舞台に登場-
(アムロはザクの模型を手で飛ばしている)

アムロ: つかまえた!

-セイラ、登場-
(アムロがザクの模型で遊んでいる姿に呆れている様子)

セイラ: アムロ! 何してるの? 地球に墜落してからもう24時間も経つのよ。あなたは人形なんかで遊んでないで,ガンダムを修理してなきゃいけないでしょ!
アムロ: これは僕のストレス解消のためのアクション・フィギュアさ!それに,センサーによれば,ガンダニュウムは月にしかないらしい。この地球にはガンダニュウムはないんだ!
セイラ: ワー!あなたの顔,どうなっちゃったの? どうやって一晩で髭がそんなにはえちゃったのよ?
アムロ: 君の髪こそどうしたの? うーん,僕らは変なタイムワープか何かの中にいるみたいだ。
セイラ: 待って…わけがわからないわ。ハロ!今年は何年なの?

-ハロ登場-
(セイラの呼びかけに、ハロ登場)

ハロ: 2019年,ハロ!
アムロとセイラ: 何だって/何ですって?
セイラ: 私たちのいるところは,ユニバーサル・センチュリーでは絶対にないわ!

-シャア登場-
(シャアが舞台袖から悠然と姿を現す)

アムロ: シャア!貴様の姿を見るのはアバオアクーの戦い以来始めてだ。
シャア: ウゥ,私を誰だと思っているのだ?
アムロ: もちろん貴様はシャアだ。今まで何度も戦ってきたぞ。
シャア: すまないが..ウウ..実は,私の名は洋一郎であってシャアではない。認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを。しかし私はザクのパイロットではなく,日本総領事などになることを選んでしまった。我々は過ちとともに生きなければならない。だから私は,日本と日本文化のことをもっと学び,一生懸命に勉強しろと皆に言って,皆にマンガやアニメを日本語で楽しんでもらえるようにすることが仕事なのだ。そして,今日は,私はサクラコンの多くの素晴らしいことのひとつ,コスプレを楽しんでいるのだ!セルフィーを撮ろう!

(シャアはシャア専用スマホを取り出し、一同揃ってセルフィーを撮影する)

セイラ: サクラの何ですって?
シャア: サクラコンだ。そこを見たまえ(と観客を指す)。君たちが墜落した場所は,完璧だ。君たちのいるのはシアトル…人工頭脳の技術開発の本拠地,そしてガンダムのスーパーファンが沢山住んでいる場所なのだ。だから,気を落とさないでくれ給え。きっと誰かが助けてくれるだろう。そうではないかね?(と観客に呼びかける)
アムロ: そうかもしれない。人間の知恵はそんなものだって乗り越えられる!さあ,何をすべきだろう?
シャア: 戦いとは、いつも二手三手先を考えて行うものだ。我々の世界では,ガンダム40周年を祝っている!(観客に向かって)みんな,ガンダムの友人たちを元気づけようじゃないか。私に続けて言ってくれ。「飛べ,ガンダム!」「飛べ,ガンダム!」「飛べ,ガンダム!」
(シャアと観客は、「飛べ、ガンダム!」を連呼)
(セイラは機動戦士ガンダムの主題歌「翔べ!ガンダム」の冒頭を熱唱)
(興奮したセイラが歌い出したのを受けて,シャアは頭を抱えて苦しがる)

セイラ: あら,ごめんなさい。
シャア: 何はともあれ,君の気分が持ち直して,よかった。
アムロ: すっかり元気が出てきたよ。ありがとう,シャア…でなくて,総領事!さあ,いっしょにサクラコンを楽しみに行こう。
(アムロとセイラが天井に拳を突き上げ、観客に楽しもうと呼びかける)
                                                 
シャア: 見せてもらおうか,サクラコンの威力とやらを。
(一同退場。シャアは観客に敬礼して去って行く)