総領事の見聞録第39回

ワインの町ワラワラに行きました

ゲストをおもてなしする会食では,おいしいお酒がつきものです。公邸での会食の際には、乾杯は日本酒で行い,ワインは白赤ともにワシントン州のものを提供しています。ワシントン州の中・東部には、ワイン生産に適した土地が広がっており、現在ではワインの生産量ではカリフォルニアに次ぐ全米第二位となっています。日照時間が長くて夜は気温が下がり、降水量が少なくて土もワインの生産に好適という条件がそろっていて、高等教育機関もワイン生産のための研究開発に熱心です。このため、市場で高評価を与えられているワインの割合が多いことがワシントン州のワインの特徴です。2000年にはワシントン州のワイン醸造業者は100軒ほどでしたが、今では1000軒を超え、毎年24億ドルの収入を生む産業となっています。この期間にワインのブドウ畑も24,000エーカー(約9700ha)から59,000エーカー(約24000ha)に増加しました。
 

ワインの瓶とコルク栓
写真提供:WWVWA - Richard Duval Images (https://www.wallawallawine.com/media-kit/)

ワラワラ市は州の最有力のワイン産地の一つです。同市では11月1日から恒例の行事Fall Release Weekend (https://www.wallawallawine.com/event/fall-release/))で今年のワインの販売が解禁になるという話を聞き,車で片道4時間半の道を出かけてきました。今年春までワシントン州商務省で働き今は京都に住んでいるアンドリュー・クラウダーさんの紹介で、ワラワラ・コミュニティー・カレッジの対外関係局長を務めるシェリル・ハンセンさんと知り合い、ワイン解禁日を教えてもらったのです。できたてのワインを味わえるということで食指が動き,公邸料理人の益子シェフを伴って視察に行きました。
 

エレベーション・ブドウ園
写真提供:WWVWA - Richard Duval Images (https://www.wallawallawine.com/media-kit/)

ワラワラ市のワイン造りは、地元の高等教育機関が人材育成や研究開発をすることで発展してきました。ワラワラ・コミュニティー・カレッジにはワイン造りを習得する2年間コースがあります。ワイン醸造学部長のティム・ドナヒューさんの話では,ワイン醸造学部の学生は既に他の大学で学位を取得してから来るため普通の大学生より年齢層が高いということで,30歳から最高齢は何と79歳とのこと。この学校はワインの醸造を教える傍ら,自ら醸造したワインを商業的に販売することも許されています。卒業する学生の9割がワイン産業で就労するということです。数日前には朝の気温が摂氏マイナス10度まで下がったので、急いでアイスワインの製造にとりかかったと話してくれました。ワインの醸造は気候条件に敏感であり、地球温暖化の影響で米国のワイン用ブドウの適作地が北上しつつあるそうです。
 
バーバラ・クラーク市長とナビエル・シャワ事務局長のお話では,ワラワラ市の人口は3万4千人,郊外を併せれば5万5千人ほどの経済圏になるそうです。かつてこの町は刑務所,スイートオニオン,交響楽団,鋳造施設などで知られていましたが,過去30年ほどでワイン生産が一大産業に成長したことに伴い、多くの人が移住してきました。ワイン学部のあるワラワラ・コミュニティ・カレッジは、過去10年間の間に2度も全米No.1のコミュニティ・カレッジに選ばれたそうで、地域に対する貢献の度合いがわかりますね。市内にある3つの大学(ワラワラ・コミュニティ・カレッジ,ホイットマン・カレッジ,ワラワラ大学)はいずれも質の高い大学で,併せて約7000人の学生がいるそうです。
 

写真提供:Cheryl Hansen氏

夜は,シェリルさんと96歳のお母さんが住む家に,私と益子シェフ、総領事館の佐藤運転手の3人で泊めさせていただきました。夜は,氷点下の野外でキャンプファイヤーにあたりつつ,溶かしたマシュマロと板チョコレートを挟んだクッキーを左手に、お湯で割って砂糖を入れたウィスキーのグラスを右手に持って,いつまでも話が尽きません。この農場にはよく鹿が現れ,時にはヘラジカやクーガー(ピューマ)も現れるそうです。益子シェフは翌朝、芸術的とも言える美しいオムレツを作って、我々が頂いた御厚誼に対して小さな恩返しをしてくれました。
 

写真提供:Cheryl Hansen氏

ワラワラ市のメインストリートには、この規模の町にしては意外なほど、ワインとチーズを楽しむ綺麗なバーが沢山あります。また、郊外にある醸造所の中には自前の販売所兼バーを設けているところがあります。どの場所でも客がテイスティングをしながら今年のワインの出来を話し合っています。夏のレセプションに協力してくれたワイン醸造所の看板が道路に出ていたので、立ち寄りました。レセプションでプロモーションをしてくれた女性がいたので再会を喜び合い、公邸用にワインを割引価格で買わせていただきました。日本酒もそうですが、飲み比べでいくつかのワインが出てきたら、一番高級なものから口にするに限りますね。いくつか試しているうちに酔いが回り、何だかよく分からなくなってきますから。
 

2019年6月の領事館レセプションでの写真
(左から)Jay Soloff氏、DeLille Cellars のKristina氏, L’Ecole No. 41のConstance Savage氏

ワラワラはちょっと遠いですが、見どころが多く、皆働き者で大らかで親切な素晴らしい町です。皆さんもどうぞ出かけてみてください。
 

(左から)益子シェフ、佐藤運転手、著者、Cheryl氏