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イベント報告

日本語教育アーテキュレーション強化へ向けてのシンポジウム開催 (4月20日)

4月20日(水)、総領事公邸にて「ワシントン州における日本語教育アーティキュレーション強化に向けて」とのテーマでワシントン州日本語教師会とシンポジウムを開催しました。経済悪化が教育にも大きく影響を与える中、日本語がカットされないためにも日本語教育は新しいチャレンジに直面しています。それぞれのレベルでそれぞれの授業を高いレベルで教えるだけでなく、教師間の横のつながりや連携が今後の日本語教育の発展には欠かせない要素です。ユニークな日本語イマージョン教育やアドバンスドプレイスメントプログラム(AP)、国際バカロレアなどを導入している教育機関のある日本語教育が盛んなワシントン州だからこそ、日本語を学ぶ学生が最終的なゴールまでスムーズに学習できるよう、また学校機関や教師が他ではどのように日本語を教えているのかを知り、ひとつの目標やゴールに向かってカリキュラムを立てていくことが重要だと思われます。以上の点を含め、日本語教育アーティキュレーションをテーマにディスカッションが行われました。 冒頭総領事挨拶はこちら

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-ワシントン州教育省・外国語教育主任、ミッシェル・アオキ氏

ワシントン州内の外国語教育における評価基準や学生の達成度を見る教育要領などの解説が行われた。STAMPテストという新しい日本語能力判定テストは、日本語学習者であれば、年齢やレベルに関係なく受けることができ、シアトル学校区では教科の単位をもらうことができるそうです。このテストは、テストのための勉強をして合否を判定するものではなく、学習した能力を判定するものであるため、学生が小学校、高校、大学と上がっていく際に受け入れ側の教師にとっても能力評価の基準となっていくものである。ワシントン州では大学入学に外国語の単位を必須としないため、州外の大学に進学する際、外国語の単位が足りずに入学できないといったケースを防ぐのにも、外国語の単位として認められるこのSTAMPテストは役立っている。

 

-カミアック高校・日本語AP担当、井上善誉氏

アドバンスドプレイスメント(AP)プログラム日本語が始まり、すぐに導入したカミヤック高校は、今年AP日本語5年目を迎えた。AP日本語を始める前は日本語クラスでのゴールというものがなかったが、AP導入して以来、1年生から3年生までのカリキュラムをAP向けに建て直してゴールに向けた勉強方法に変更した。現在は、「何を教える」のではなく、「どう教える」という教授法を取っている。AP日本語を単位として受け入れる大学は全米で200校ほどであり、未だ成長過程であるが、レベルの高い学生にとっては、学習のゴール設定ができ、さらには大学の単位に移行できるという面で有利なプログラムである。一方、教師にとってはAPテスト合格のために学生に詰め込まなくてはいけないという勉強方法と楽しく日本語を学ぶという勉強方法の間でジレンマに陥ることもある。それも今後の教育者としての課題である。

 

-ケント・メリディアン高校・国際バカロレア日本語担当、ジュディ・コーブル氏

国際バカロレア(IB)は1968年にスイスのジュネーブで創立されたもので、IBの定める教育課程を修了すると得られる資格である。最初は私立の学校で導入されることが多かったが、現在、世界中でIBを導入している学校の半分は公立学校である。ワシントン州では16校の高校がIBを導入しているが、IB導入にあたっては学校、または学生が導入の経費や登録費などを支払わなくてはならない上に、IBを教える教師は特別にトレーニングを受けなくてはならないなど、学校の大きな協力が必要である。IB日本語では、初級レベルの文法から始まり、高いレベルでは夏目漱石や三島由紀夫のような日本文学を読むことになる。高校の教育課程でIB資格を得ることは、大学での学費免除や奨学金などにつながることが多い。

 

-ワシントン大学日本語学部、松田いずみ氏

ワシントン州における高校で日本語を受講した学生が多く進学するワシントン大学での学生の受け入れについて説明がなされた。大学での日本語講座のスピードにしっかりついてこられるよう、適切なレベルに学生を入れるために、日本語を高校で受講した学生にも必ずプレイスメントテストを受けさせている。APやIBを持った学生には単位を与えているが、大学と高校のレベルの違いや、生活環境の違い、クラスが進むスピードの違いなど新しい環境に考慮するためにそのような学生にもプレイスメントテストを行い、適正なクラスへ配属をしている。

 

Q&Aセッション

質問1)高校生で日本から米国へ引越し、米国で大学へ入るといった場合、日本語能力はどのように評価されるべきか。

 →回答)アオキ氏から紹介があった、STAMPテストを受ける。

質問2)高校で日本語を勉強した学生で、ワシントン大学の科学技術日本語クラスに入りたい学生はどのようなプロセスを踏むのか。

 →回答)ワシントン大学工学部科学技術日本語クラスに入るには、まずはプレイスメント試験を受け、レベルに応じたクラスへの配属を行っている。口答試験も実施している。

質問3)高校で2年間日本語を勉強した後、コミュニティカレッジで日本語を勉強してからワシントン大学に入学した学生についての調査や情報はあるか。

 →回答)調査は行っていない。これからK-16アーティキュレーションを推し進めるためにも、マジョリティ以外の学生のバックグラウンド調査なども必要になってくる。

質問4)高校でAP日本語を取り、大学の15単位を既に持ってワシントン大学に入学する学生は、なぜそのまま2年生レベルに入れないのはなぜか。

 →回答)ワシントン大学では、大学レベルの適正なクラスに学生を配属するために、日本語クラス受講希望者には、プレイスメント試験を全員受けてもらっている。ワシントン大学の日本語クラスは高校とは教え方が大きく変わり、また教科書も違うため。

 

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第1回目のシンポジウムの結果を踏まえ、日本語教育K-16のアーティキュレーション強化をテーマに行われた第2回目のシンポジウムでしたが、中学・高校教師にとっては、自分の学生が大学へ行くときにどのようなクラスに配属されるのか未知の世界であり、また大学側としてもどのように高校で勉強してきているのか、というのをお互いに知るには大変よい機会だったように思われます。またワシントン州の教育副省長や高校の校長先生、国際交流基金ロサンジェルス事務所の勝賀瀬副所長も参加してください、アドボカシーとアーティキュレーションを強化を目指す内容のシンポジウムとして、大変実りの多いものになりました。これからもより学生がスムーズにレベルアップしていけるよう、教師間の連携を深め、また教育省や学校区とも協力することが、日本語教育発展につながるでしょう。