イベント報告
第3回日本語教育シンポジウム (11月16日)



11月16日、総領事公邸にて「東日本大震災を受けての交流事業の今後の展開について」とのテーマでシンポジウムを実施しました。本シポジウムには日本語教師のみでなく、ワシントン州教育省代表者や複数の学校長が参加して情報・意見交換を活発に行い、当地における日本語教育の更なる推進にとって非常に有意義な機会を提供することができました。尚、本シンポジウムでは、東日本大震災後の交流事業及び日本語教育事情についての実態調査をするため、事前にワシントン州日本語教師会(以下WATJ)に所属する日本語教員を対象にアンケート用紙を配布しました。得られた回答をもとにグッドプラクティス集を作成、会場に配布した他、WATJ会長であるサラ・アントンスィッチ氏が本シンポジウムにおいてその内容を紹介しました。
シンポジウム概要
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アラン・バーク氏(ワシントン州教育省副責任者、平成23年度北米教育関係者グループ招へい事業(国際交流基金主催)参加者)による発表
日本の教育においては子供が「自覚」、「反省」、「我慢」といった価値観を持つよう強調されており、生徒の「自尊心」を強調するアメリカの教育とは違いがあります。また、日本の中高生の半分以上もが学習塾に通っており、この点アメリカとは違います。常に変化する日本の現状をよく捉えるためにも、日本語教育に携わる者が同国へ行くことは非常に重要であると考えます。
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ジェスリー・アルヴァレス氏(ジョン・スタンフォード国際小学校長、平成23年度北米教育関係者グループ招へい事業(国際交流基金主催)参加者)による発表
日本の教育では、生徒の健全な精神育成が重要視されている点が非常に優れていると感じた。同じ学校内で障害者が健常者とともに学習する機会が与えられていることについても良い印象を受けました。訪問した学校が日本の社会の一部としての責任を果たすため、節電などをして被災地復興に協力しているのを目の当たりにし、日本の国の団結力が強いことに感銘を受けました。
- ベンジャミン・エリクソン氏(兵庫県ワシントン州事務所文化教育担当ディレクター、元JET参加者東北被災地招待プログラム参加者)
「元JET参加者東北被災地招待プログラム」を通して被災地を訪ねた際、東北の人々が懸命に復興のため働いていることに感銘を受けました。東北には観光するのに魅力的な場所がいくつもあります。日本語教師及び日本に興味がある生徒の方々には是非東北へ行き、観光をしていただきたいです。生徒には東北被災地においてボランティアをするという選択肢もあります。ボランティアをすることで生徒は日本語を勉強できるとともに被災地復興に向けて手伝うこともできるからです。
- サラ・アントンスィッチ氏(ガーフィルド高校日本語教師、WATJ会長)
当館が用意したアンケートに対して得られた回答を紹介。回答は22名からの日本語教師(うち14名は公立の高等学校に所属)より回答があり、震災前は16名が所属する学校において日本との交流プログラムが実施されていたが、うち2名より現在交流プログラムが中止、2名より交流プログラムが延期されている旨報告されました。
また、当地学校の日本語授業では、東日本大震災がしばしば取り上げられていることがわかりました。震災関連のニュースを取り上げたり、震災関連の内容を科学、社会、経済、地理といった内容と結びつけ、日本語授業の中で教えられています。 - 田染多江子氏(ルーズベルト高校日本語教師、元WATJ会長)
東日本大震災後、東北地方について重点的に授業で教えました。また、歴史的、文化的に日本で地震がどのように取り扱われてきたかや、地震が起きる仕組み、地震の種類等、科学的な視点を混ぜての説明をした。震災後、姉妹校である兵庫県立龍野高校から生徒が来たが、そのことは当地の生徒に日本を印象づける点において意義深かったと思います。
当地の日本語教師として震災後の復興に携わるためには、日本は現在震災前と変わらず通常どおりであることを生徒に伝えることが重要であるとともに、震災後の日本人の我慢強い対応など、日本文化には数多くの優れた点があることを教えるべきであることが話し合われました。さらには、日本との接点が少ない地域にある学校においても交流活動を活発化させるべきである旨が確認されました。

