山田総領事(2017.6~2020.7)の見聞禄

2019/10/24

スポケンとプルマンを訪ねました


ワシントン州第二位の人口(約22万)を有するスポケン市はワシントン州の東部にあり、近年医療関係セクターの企業が続々と進出するなどダイナミックな成長を遂げています。アマゾンも巨大な物流センターを建設中です。過去8年にわたってこのような発展を牽引してきたのが、デイビッド・コンドン市長です。9月23日に久しぶりに市長にお会いした時には、いつものバイタリティーあふれる明るい笑顔で迎えてくれました。
 
スポケン市のコンドン市長

スポケン市は、市民に対してユニークな方法で市の施策や公約を紹介しています。コンドン市長は公約と各種のイニシアチブ、それらの達成状況について、イラストを用いてカラフルな一枚の紙に見やすくまとめて配布しています。そのため、市民は税金がどのような形で市に利用されているかについて、容易に理解することができます。明快なメッセージで政治家としての人気を得た彼は、過去40年間で再選を果たした初めての市長となりました。スポケンでは市長の他、5人の州議会議員とお会いしてお話を伺いました。
 
またスポケンでは、ワシントン州家庭内暴力対策連盟(WSCADV)の年次集会に参加しました。これは、今問題となっている外国人配偶者の離婚問題(第2930回)に深く関わる分野です。400人以上が2日間集まる年次集会は参加者の90%以上が女性です。登壇する人たちの話を聞いていると、正義(justice)と尊厳(dignity)という言葉がキーワードであることに気付きます。この集会に参加すると、女性達が議論を重ね、社会的弱者にこれらの理念が実現するための努力をしていることが伝わってきます。
ワシントン州家庭内暴力対策連盟(WSCADV)の年次集会

翌日は、ワシントン州立大学(WSU)の本校所在地であり,ひたすら続く小麦畑のただ中にある町,人口3万4千人のプルマン市に行きました。まず始めにグレン・ジョンソン市長を訪問しました。市長は長年WSUでメディアについて教鞭をとるとともに、大学のフットボールチーム「クーガーズ」のゲームの実況中継アナウンサーも務めてきました。話していると、彼の深くてソフトで滑らかな声の魅力に惹き込まれます。すでに市長を4期務めており、11月の選挙も対抗馬が出なかったので5期目に入ります。プルマンは経済も好調、しかも市長の声は市民の皆さんが知っているのですから、確かに誰が選挙に出ても勝つのは難しいだろうと感じました。
 
プルマン市のジョンソン市長

小さなプルマン市ですが、人口のうちワシントン州立大学(WSU)の学生が2万人を占めています。WSUはプルマンの他にも4か所のキャンパスを持ち、農学やライフサイエンスを中心に新たな技術と雇用を生み出してワシントン州東部の地域社会の発展に寄与している総合大学です。私は今回、大学のTom Foley Instituteから日本を取り巻く国際情勢について講演を行うよう依頼され、そのためにプルマン市に出張したのでした。故Tom Foley氏は90年代の前半に6年近く連邦下院議長を務め、97年から2001年までは駐日米国大使を務めた大物政治家です。50人の学生に対して講演した後,学生たちからは日本の憲法改正、沖縄駐留米軍など,大学のレベルの高さを示す質問が相次ぎました。
Foley Instituteの訪問

プルマン市内では時間に余裕があったので,ジョンソン市長に見所を質問しました。すると、市長は直ちにシュバイツァー・エンジニアリング・ラボラトリーズ(SEL)という会社の副社長に電話を入れ、早速、会社訪問が実現することとなりました。市内にはウーバーが一台しかないとのことで、市長さんがわざわざ自分の車を運転して我々をその会社まで届けてくれました。
 
 
SELは電力網を安定的に運用するシステムの構築や保守サービス、機材製造をする大企業です。本拠地のプルマンでは2500人を雇用し、日本の大企業とも取引があるそうです。ロシアの南にジョージアという国がありますが、ここでは毎年全国的な停電が何度も繰り返されていたところ、SEL社のシステムを導入した2014年からそのような停電は一度も発生しなくなったそうです。千葉県では9月初めの台風被害で発生した停電で大変な思いをされている地域がありますが、私は話を聞きながらSEL社ならこれを予防できただろうか、などと考えていました。
 

創立者のエドモンド・シュバイツァー氏はWSUの出身で、彼自身この大学で教えたほか、プルマン市でも大きな社会貢献をしています。今回、プルマン市で企業、大学、地域社会の関係について学ぶ良い機会を得られたことに感謝しています。