1.治安情勢全般
(1)ワシントン州における重要指定犯罪(凶悪犯罪と財産犯罪)の発生件数は、2005年の「329,950件」をピークに減少傾向にあり、2011年は「258,996件」で、過去10年間で最少となっています。
2010年の重要指定犯罪の発生件数「268,103件」と比較すると、凶悪犯罪、財産犯罪ともにそれぞれ全体としては前年比「5%」、「3.3%」減少していますが、個別には殺人事件の発生件数が「約3%」、侵入窃盗事件の発生件数が「約1%」増加しています。
(2) ワシントン州保安官・警察署長協会が発表した2011年の犯罪統計によると、ワシントン州全域の犯罪概況は次のとおりです。
◎重要指定犯罪
258,996件(前年比 3.4%減、9107件減)
「重要指定犯罪」とは、殺人、強姦、強盗及び加重暴行(傷害)の「凶悪犯罪」、侵入窃盗、単純窃盗、自動車盗及び放火の「財産犯罪」の計8罪種。
○凶悪犯罪(殺人、強姦、強盗、加重暴行)
全 体: 19,568件(前年比 5.0%減、1032件減)
殺 人: 159件(前年比 3.2 %増、5件増)
強 姦:2,217件(前年比 11.32%減、282件減)
強 盗:5,545件(前年比 5.6%減, 332件減)
加重暴行:12,576件(前年比 3.5%減, 423件減)
○財産犯罪(放火、侵入窃盗、自動車盗、単純窃盗)
239,428件(前年比 3.8%減、8075件減)
放 火:1,263件(前年比 4.0%減、 52件減)
侵入窃盗:54,833件(前年比 0.8%増、 412件増)
自動車盗:24,114件(前年比 4.6%減、1163件減)
単純窃盗:159,218件(前年比 4.4%減, 7,267件減)
単純窃盗とは、侵入窃盗、自動車盗を除いた窃盗犯罪全般(スリ、置き引き等)。
ワシントン州内主要都市における犯罪発生状況(2011年)は、こちら。
(3)シアトル市警察本部の発表によると、2011年の重要指定犯罪発生総数(放火を除く)は35,458件で、前年比3%の減少となりました。在種別に見ると、凶悪犯罪は全体的に前年比4%増加しており、強盗以外の殺人、強姦及び加重暴行(傷害)はそれぞれ増加しています。また財産犯罪では、全体的に4%減少していますが、侵入窃盗は6%増加しています。自動車盗に関しては、2006は8,138件の発生があったことを考えると、2011年はこの半分以下の3,400件であり、近年減少傾向にあると言えます。しかしながら、シアトル市内では依然として、1日当たり約9台の自動車が盗難被害に遭っていることになり、人口10万人当たりの発生件数で比較した場合、この数値は東京都の約85倍の発生率となります。
シアトル市は治安の良い街として知られていますが、あくまで「米国内では」という条件がつきます。発生件数及び人口からみると、2011年の統計上では、1,000人中約60人が何らかの犯罪被害に遭っている計算になります。また、同市内で、1日当たり平均約100件の犯罪、18件の侵入窃盗、約4件の強盗がそれぞれ発生していることとなります。「治安が良い」とは言っても、日本の治安状況とは比較にならないほど悪いという認識が必要です。
【参考】
人口10万人単位で見たシアトル市と東京都の主要犯罪発生率の比較
(2011年統計、数値は人口10万人あたりの発生件数)
|
殺人 |
強姦 |
強盗 |
自動車盗 |
東京都 |
0.9 |
1.3 |
4.3 |
6.6 |
シアトル |
3.2 |
16.3 |
231.6 |
555.5 |
比較 |
×3.5倍 |
×12.5倍 |
×53.8倍 |
×84.1倍 |
2.具体的注意事項
(1)夜間の外出は注意が必要
依然として、都市部を中心に夜間帯における自動車盗、強盗、銃器発砲事件が発生しており、無関係の者がけん銃使用による殺人事件の被害者となっているケースもあります。夜間の外出には、十分注意が必要です。
(2) 引き続き自動車盗に注意
特に、シアトル、タコマ地区及びその近郊では、引き続き自動車盗が多発しています。先述のとおり、シアトル市における自動車盗難の発生件数は年々減少傾向にあるとはいえ、1日当たりの平均約9台が盗難に遭っています。盗難等の被害に遭いやすい場所は、夜間、管理者がいない所(監視・防犯カメラのない所)、人気のない所、レストランやモールの駐車場であっても人通りの少ない箇所です。駐車する場合は、これらを避けるようにしましょう。
(3) 薬物関連犯罪、ギャング関連事件の頻発
ワシントン州においては、多くの薬物に関連する犯罪が発生しています。 当局も取締りを強化しているとはいえ、依然路上やバー等での売買が行われており、日本と比較した場合、薬物汚染の問題は一層深刻と言えます。薬物自体の脅威は言うまでもありませんが、これに絡む凶悪な犯罪も州内で頻発しています。薬物の取引がトラブルとなり、その結果殺人、強盗、傷害等の凶悪事件に発展する例も少なくありません。こうした犯罪に巻き込まれないためにも、決して興味本位で薬物に手を出してはいけません。
また、シアトル市やその近郊都市においては、ギャングの活動も盛んで、ほぼ毎日のように、ギャング同士の抗争発砲事件、殺人、傷害事件等が報道されています。ギャング関連の発砲事件は、深夜、繁華街等で発生するケースが圧倒的に多いので、こうした事件に巻き込まれないためには、深夜の外出は極力避けた方がよいでしょう。
(4) 観光客狙いのひったくり、車上狙い
シアトル・ダウンタウンでは、観光客を狙った強引な手口のひったくりや車上狙いが多発しています。アメリカ人は現金ではなくカードを持ち歩きますが、日本人は現金を持ち歩く傾向が強く、学生であっても大金(現金)を所持していると思われています。昼間といえども、一人歩きの際や理由もなく近寄ってくる者には、細心の注意を払うことが必要です。観光地では、車内からカバン等が盗まれる車上狙いも多発しています。自分では貴重品ではないと思っていても、他人からは貴重品に見える場合もありますので、車を駐車させる場合は、安全な場所に駐車するとともに、車内には何も置かないようにした方がよいでしょう。 また最近特に目立つのは、携帯音楽機器や最新型の携帯電話端末を狙った路上強盗事件で、昼夜を問わず発生しており、けん銃を使用した犯行も多発しています。歩行中にこうした機器を使用することは、周囲に対する注意・警戒力を鈍らせるばかりでなく、犯罪を企む者にとっては、財物の所持を宣伝しているようなものです。現に、こうした機器を使用しながら通りを歩いていた日本人が、いきなり背後から暴行を受け、強盗被害にあったケースも報告されているので、こうした機器の使用には、十分な注意を払う必要があります。
(5) ホテルでの盗難
ホテルのロビーや室内での盗難も発生しています。パスポートやクレジットカード、現金等の貴重品は、ホテルの室内に置いたままにして外出することなく、「確実な施錠設備のある金庫に保管する」、「ホテルのフロントに預ける」、または「携行」するようにしましょう。
なお、パスポートは特に大切なものなので、携行する際は、バッグとは別に携帯する方がよいでしょう。
「安全な街」で「安全に過ごす」ためには、「安全に過ごす努力(防犯措置)」が必要です!
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